【創業支援コラム】20150206 資金調達とビジネスプランの策定その1
先日、日本政策金融公庫の方のお話しを聞く機会を頂けたので、今回と次回で創業時の資金調達などについてお話しさせていただこうと思います。
日本政策金融公庫というのは100%政府出資の国の政策金融機関で、民間金融機関が対応しづらい分野、特に創業支援を積極的に支援しています。
大企業の中にも創業時に公庫から金融支援を受けた会社も多く、上場企業の約1割がこの事業の卒業生だそうです。
その他、NPO法人を中心とするソーシャルビジネスへも積極的に金融支援を行っています。
創業をお考えの方にはとても頼りになる存在ですし、多くの創業に関わっている公庫の担当者の経験を聞くことは、事業を継続していく上でとても参考になると思います。
1、 まずは創業を成功させるために必要なことです。
(1) 要約すると次のことが大切だそうです。
① 創業前の準備:しっかりとした計画(ビジネスプラン)
② 創業後の経営努力:予実管理(計画・目標に対する進捗管理)
の二つです。どんぶり勘定では良いところと悪いところが相殺され、問題点を隠してしまうので良くありません。
科目ごとに細かく見積もることが大切です。
(2) しっかりとした計画とは?
公庫は特に次のような3つの観点から創業計画を見て、成功の可能性を判断するそうです。
① 「人」
・本人の「思い」や「経験」と事業内容がマッチしているか。
・困難を乗り越えていける熱意・志の高さがあるか。
・必要なスキル・ノウハウを身につけているか。
これはそのとおりですよね。経験、熱意、スキル、ノウハウ、どれがなくても事業化しようと決意するに至らないでしょう。
② 「モノ」
・ビジネスとして成り立つだけのニーズがあるか。
・取扱商品、製品、サービスに特色はあるか(コンセプトは明確か)。
・他の企業との競合に耐えうるものか。
・取引先(販売先、仕入先等)や従業員は確保できているか。
商品や製品は他との差別化ができているか。取引先は勤務時代にある程度目ぼしがついてないといけません。従業員についても、申し込みの段階では計画を煮詰める段階なので、こちらも目ぼしがついていないといけません。
③ 「金」
・開業にあたっての資金計画は無理のない計画となっているか(何にいくら必要で、その資金はどのように調達するか)。
・開業後の収支計画は適切か(いくら売り上げて、いくら利益を出して、いくらなら返済できるか)。
特に売上は過大となっていないか。単なる希望的な数字にならないよう注意しましょう。
2、 つぎに資金計画の立て方です。
こちらも要約すればポイントは次の二つです。
① 過大投資+自己資金不足では成功する可能性は低くなる。
② 基本は「小さく産んで大きく育てる」発想が必要。
特に①は融資を断られる典型パターンなのだそうですから、気を付けましょう。
(1) 何にいくらかけるか(何に重点化するか)
・設備資金は「どうしても譲れないもの」に絞り込みが必要です。
「思い」が強すぎると、どうしても過大な設備投資になりがちです。
その立派な設備が本当に売上アップ、コストダウンにつながるのかよく検討しましょう。
ただし、例えば飲食業の厨房設備など譲れないものは残し、安物買いの銭失いにならないよう注意しましょう。
・運転資金の確保
運転資金を見落としがちになってしまいますが、開業後、軌道に乗るまでには相応の時間が必要です。
黒字化までは平均7か月かかります。
ですから余裕を持った運転資金の確保が必要で、開業時の投資に全部使ってしまって手元に余裕資金が残らないような計画は立ててはいけません。
(2) 創業資金の調達
○検討面での優先順位は次のようになります。
① 「増やす」…自己資金を貯める、資産を売却する。
② 「減らす」…必要額を削減する。
③ 「もらう」…協力者(エンジェル)をつくる。国や県の補助金を活用する。
④ 「借りる」…最終手段。
③については親から援助を受け、あるいは借りるということです。
このお金を贈与として税務署に報告するようなことは無いそうです。
あくまでも将来返すお金だということでしょう。
マイナスになるようなことは無いので正直に言ってほしいと言っていました。
融資を受けるためにはプラスになるので、公庫としては親に援助する意思があるかを直接確認できればなお良いということでした。
○ここで自己資金の重要性をもう一度確認しておきましょう。
・自己資金が少なければ少ないほど相対的に借入依存度が高くなってしまいます。そうすると、借入返済のために、より多くの売上・利益が必要で苦しくなります。
・開業時に自己資金を投入し過ぎると、開業後の資金繰りに余裕がなくなります。
赤字が続いたり、思わぬ出費があったりすると、たちまち資金繰りに行き詰まります。この段階で金融機関に行っても融資は無理なので手元に2・3百万円は残しておくべきでしょう。
○このように自己資金はとても大切ですが、どのように集めたものなのか、創業に向けた準備の証しとして自己資金の見える化が必要です。
・努力して蓄えてきた自己資金・・・できるだけ蓄積の経過がわかるように整理しましょう。具体的には預金通帳等のことです。
融資申し込み直前に突然2・3百万円の振り込みがあるなど、融資申請のためだけにお金を用意してもどこから借りたのかを聞かれてしまいます。
・貯蓄の経過を示すことで、支援者や金融機関に対して創業意欲や計画性を示す裏付けの1つにもなり、信用度がアップします。
○では自己資金の目安はいくらくらいなのでしょうか。
・実態調査での平均は305万円で、これは創業資金総額の27%です。
・1つの目安ではありますが、創業資金総額の1/10以上あれば公庫の「新創業融資制度(無担保・無保証)」の自己資金要件をクリアします。
(3) 金融機関の活用
○金融機関から借入するための最重要ポイント
①自己資金・・・これは前述のとおりで重要です。
②勤務経験・・・一概に何年以上の勤務経験が必要ということはありませんが、技術力や店舗経営についてのノウハウの習得度はどうか、勤務年数だけでなく、どのような実績を残したか、といった点もポイントです。
審査の際にも聞かれますので、例えば、勤務時に自分が行った販売促進策などの実績をこまめにメモして記録する、勤務時の日々の売り上げなどをメモしておく、などの目に見える形で実績を残した資料は借入申込時に役立ちます。
③諸支払い・・・公庫では、融資後の返済をきちんとしてもらえるかどうかの判断材料の1つとして、公共料金、家賃、住宅ローン等の日頃の支払いぶりを確認します。
これらは延滞が無いように注意することと、公共料金等の支払いは通帳からの引き落としにして、記帳した通帳を大切に保管しましょう。目に見える形で信用力を示すことが大切です。
○借入額や返済条件は、今後の資金計画をしっかり立てたうえで検討しましょう。
見込んでいる利益から無理なく返済できる額を借り入れることが大切です。
無理があると感じたら、返済期間を延ばすのではなく、設備投資の見直しや身内の援助を得るなどして、借入額を極力抑えることを考えましょう。
○借入申込時の金融機関との接し方(テクニックではなく、基本的な心構え)
・金融機関も基本的には「融資したい」と考えています。・・・まずは自分の「思い」や「計画」をしっかり、わかりやすく説明しましょう。申し込み後1週間程度で面接になりますので、面接までに答える練習をしておきます。
・ありのままを話しましょう。・・・話す内容はすべて事実からスタートしましょう。矛盾があると後で聞かれます。
・できるだけ「見える化」します。・・・創業計画書は最高の見える化と言えます。
次回はこの創業計画書についてお話しさせていただきます。